大判例

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東京高等裁判所 昭和30年(行ナ)54号 判決

右当事者間に争のない事実及びその成立に争のない甲第一号証(分割特許願其二の明細書)を総合すれば、原告の本件発明の要旨は、ニードルベツトにレールを螺子によつて締着固定した編物機であつて、その目的はニードルまたはジヤツクの運動を精確にするためニードルベツトの垂下及びレールの彎曲を防止し、かつ溝蓋の必要をなくするようにしたものであることが認められる。

原告は、本件出願発明におけるニードルベツトは厚さ八ミリ以上の厚鋼板を使用するものであると主張するが、ニードルベツトの鋼板の厚さについては明細書中全然これに言及するところがないばかりでなく、図面によつても、本件発明に到底かゝる限定があるものとは認められない。

その成立に争のない乙第一号証によれば、審決が引用した特許第一二一〇九〇号明細書には、テーブル盤上に載せた台板の中央部を溝板となし、この溝の前面に格子状受杆を列植し、中央に支杆を突出させた編針を支杆の上端を溝の上面に突出させ、その先端掛鉤を、前面の格子状受杆に出没するように溝内に横架し、台板の上面前後にレール板を並設し、右レール板の間に編針を進退せしめるための摺動盤を左右に自由に摺動することができるように架設した構造の家庭用編物機が記載してある。すなわちこれによれば、レール板は多数の溝を穿つた溝板を具えた台板の上面前後に並行して設けられ溝蓋なく、かつ右二本のレール板は、その取付方法は記載してないが、何等かの方法で台板の上面に固着されていることが認められる。

よつて右認定にかゝる本件発明の要旨と引用明細書に記載されたものとを比較すると、後者における台板は、前記構造及び作用からみてこれを前者におけるニードルベツトに相当するものと認めるを相当とし、編物機においてニードルベツトにレールを固着した点では、両者は全く一致している。ただ前者がその固定方法として螺子による手段を採用したのに対し、後者ではその固着手段に関して何等記載するところがない。しかしながらレールの固着手段として螺子によることは、普通のことで何等発明思想を要するものとは解せられない。そして本件出願発明における前記目的すなわち溝蓋の必要性のないことはもちろん、これによつてニードルベツトの垂下及びレールの彎曲を防止して、編針の運動を精確にすることは、後者においても当然期待されるところであつて、ひつきよう、両者は均等の発明にかゝり、本件出願発明は、特許法第四条第二号により、同法第一条の特許要件を具備しないものといわなければならない。

原告は、引用特許明細書に記載された家庭用編物機は空想的発明にかゝり、本件出願のものと格段の相違があるのに、これを引用して原告の出願を拒絶すべきものとした審決は違法であると主張するが、審決は右引用特許明細書に記載され編物機の全体を引いて、原告の発明と比較したものではなく、同明細書記載のうち前に認定比較したと同一の部分に、原告の本件出願発明の要旨とするところのものが、容易に実施することを得べき程度において記載されているとなしたものであることは、当事者間に争のない審決の記載内容に徴し明白であり、この限りにおいては、引用明細書に記載されたところが、実施不能で、いたずらに空想的なものとは認められないから、右原告の主張もこれを採用することができない。

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